Superwoman.

何故、今頃・・と思った。
「若い選手ヘの刺激」という復帰の理由も、釈然としなかった。
きっと、他のプレイヤーのように、試してみて、諦めて・・・
消えてゆくのだと思った。
Alicia Keys 「SUPERWOMAN」

グラフに勝った96年のフェドカップ。あれもすごかった。
が、本当の真剣勝負の舞台である、その直後のウィンブルドン。
あの時、日没による延期が無ければ、彼女が勝っていたかもしれない。2セット目を取り、1-1となった試合の流れは完全に彼女だった。早すぎる延期のコールに疑問を感じた。

ランキングは4位にまで上昇。
その後、WTAのルール改正をきっかけに、彼女は引退。
これらの試合をきっかけに彼女に注目たマスコミや、にわかファンは、「早すぎる引退」と騒いだ。
しかし、以前から彼女に注目していた者としては、ちっとも早いとは思わなかった。

海外選手に比べ、小柄な体をギリギリまで使ったプレイは、そう続くものではない。あの時の彼女には、そのギリギリで戦う悲壮感が漂っていた。見ていて、痛いほどだった。
試合の質だけでなく、量も重視するようになったあの時のWTAのルール改正に、自身の体力に見合った試合に絞って出場してきた彼女がランクを落とすことは確実。

だから、引退には、「やはり」という気持ちしかなかった。
そして同時に、ここまで上位に食い込むことができる日本人は当分、いないだろうと思った。才能ももちろんだが、試合数をこなすことができる体力をも同時に持ち合わせなければならない。

そんな事を考えた、12年前の彼女の引退だった。



テニスは個人競技。
競技自体ももちろんだが、練習、試合、遠征・・・すべて個人でセッティングしなければならない。

野球、バレーボール、サッカーなどはチームに入ってさえいれば、雑用はほとんどは「誰か」がやってくれる。
しかし、テニスはそうはいかない。
試合に自分でエントリーし、遠征の為のチケットを取り、宿泊先を確保し、練習用のコートの予約も自分でしなければならない。
そして、自分に合った食事を採れる環境を整える。彼女が、海外遠征先に米と炊飯器を持参していたことは有名な話。
ラケット、ウエア、靴、そしてそんな重い荷物も自分一人で持つ。
「誰か」が運んでくれるわけではない。


そうして彼女は自身の力で、ランキングを上げてきた。
が、ランクが上がったら、急にマスコミやら協会やらがすり寄ってくる。そんな状況に彼女は愛想よく対応しなかった。その為、パッシングもされたことも。
オリンピックに出場しようとしなかったことも大きな一因。
当時は、当然オリンピックはWTC公認の試合ではない。努力してランクを上げてきているのに、オリンピックに出場したら、公認の試合が減り、ランクが下がってしまう。そこまでして、なぜオリンピックに出場しなければならないのか。出場を要望する日本のファンや、協会に、そこまでする恩は無い。
そう、彼女が考えるのは当然のことだろう。

当時、6位という高位にランキングされていた彼女は、そうして引退していった。決して暖かく見送られた引退では無かった、と私は思う。



あれから、11年後の復帰。

まさか、ここまで彼女がやるとは思わなかった。
彼女のことは、少しは分かっているつもりだったが、まったく分かっていなかった。
更に、更にすごい人だった。

もちろん、現在の女子テニス界は不振。というより、良かった時期も無いが。
彼女に続く選手はいない。ダブルスで活躍できたプレイヤーもいたが、やはり、テニスの世界ではシングルありき。

10年以上経って復帰した選手に勝てない現役選手。
こんなスポーツ界が他にあるだろうか。
多分、無いだろう。
彼女が秀でているのも事実だが、強い現役選手がいない事も事実。
復帰の当初の理由である、「若い選手への刺激」にはなっただろうか。彼女の偉大さを見せつけたのは事実。これをどう若い選手たちが自分に取り入れられるかは、結局その選手次第。
彼女に影響を受けた選手が、いつか、いつの日か、大きな舞台で試合する姿を見たい。


彼女が偉大なのは、もちろんその才能だけではない。努力があってこそ。
そのブランクを埋めるために、彼女がした努力。彼女がし続けている努力。想像できないほど大変な努力なのだろう。しかし、彼女はその過程を楽しんでいるのだろう。
時折TVで見る彼女の表情を見て思う。
今こそ、本当にテニスが楽しいのだろうと思う。上位にランクされていたあの頃より、はるかに。


彼女はこうして努力し、楽しみ、勝ち、今は全豪オープンを目指してオーストラリアにいる。
彼女が満足できる、楽しむことができるツアーになることを、心から願っている。


テニスプレイヤー 伊達公子。
Super woman
Yes, she is

この記事へのコメント

  • mimi

    こんにちわ!

    伊達公子さん、輝いてますね。
    YES,NOの言える方ですよね。
    潔さと柔軟な心の持ち主ですね。
    これからの、生き方にも目が離せません。

    はるかに年下なのに、尊敬しちゃいます。
    2009年01月14日 12:34
  • 夢子

    vino secoさんの文章に、いちいち”へ~そうなのか”とか”なるほど~”などと思いながら読ませていただきました。
    現代版大和撫子なのかな?
    並外れた根性の持ち主ですね。 パートナーが外国人であることも、再挑戦に奮起出来た一因ではないのでしょうか。
    マスコミも暖かく見守ってほしいですね。
    2009年01月14日 13:27
  • だいぼー

    格好良い生き方してるなと思います。

    現役復帰したからか?サーキットで
    姿が見れなくなったのが残念です。
    2009年01月14日 17:48
  • vino_seco

    mimiさん。
    本当に輝いていますよね。自分のやりたい事をやっているからでしょうね。
    「潔さ」と「柔軟」ですか。確かに。
    大切なことですよね。
    2009年01月14日 23:15
  • vino_seco

    夢子さん。
    すいません。伊達さんのことになると、ムキになっちゃって・・・(笑)
    マスコミが取り上げるのは、ほんの一時期のたった一面ですものね。特別な関心がない限り、知られていない事は一杯あると思います。
    再引退した時、パートナーがいてくれるというのは、心強いことだと思います。
    本当に、マスコミ、伊達さんに限らず、スポーツ選手を暖かく見守って欲しいですよね。
    2009年01月14日 23:20
  • vino_seco

    だいぼーさん。
    そっか、そうですね。サーキットで。
    私の知らない伊達さんをご存じなんですね。(笑)
    2009年01月14日 23:23
  • smile

    こんばんわ♪
    一生懸命生きている人ってステキです!
    復帰した時の彼女 晴れ晴れとしていて安心しました。
    やっと自分のテニスができるっていう顔していたように見えました。
    今度は彼女のテニスを自分自身で楽しんで貰いたいと思います。
    2009年01月15日 21:45
  • vino_seco

    smileさん。
    やはり感じました?晴れ晴れとした感じ。
    そうですよね、今度は自分の楽しみのために、テニスができたらいいね。って思います。
    2009年01月16日 22:48
  • Yasmin

    ごめん。
    私、テニスのことは全く分からないけれど
    時折、メディアで扱われる彼女の
    INTERVIEWとか見て、
    「気持ちぃい、モノの云いをする人だな」
    って、思ってました。
    海外遠征等が幼少から多かったのでしょうか?
    体格も全く違う、外国勢の中で戦い抜いてきた
    彼女は、テニスだけじゃなく人間形成でも
    外国勢との交わりで培ってきたものが
    沢山あるのだなと、ある種の共鳴を感じました。

    そしてそれを以て日本で発言すると叩かれる
    というのも、私も3年程東京の会社に出向した
    時に体感したもの。

    自分と比べるのはおこがましいけれど(笑)
    11年のブランクを経ての復帰劇は
    今の女子テニス界の低迷を警鐘する
    確たる証拠の他の何モノでもないんでしょうね。

    勿論、テニスにはず~っと携わって
    いたのでしょうけれど、ブランクを経ても
    TOPプレイヤーに食い込めるその実力と
    精神力は、まるで白鳥のよう。
    水の中で必死に掻く水かきは決して
    優雅なその姿と同時に絶対見せることはなぃ。
    プロ根性の極みですね~。
    2009年01月17日 05:53
  • vino_seco

    Sis♪
    うん、この記事はテニスについてというより、生き方についてだからさ。
    海外で一人で揉まれてきた彼女ですから、「ぬるい」発言でお茶を濁すことなんて出来なかったんだと思う。
    sisは日本に出向したことがあるんだ・・
    同じようには出来なかっただろうね。きっと。

    こんなすごい人に向かって言うせりふじゃないけれど、彼女、昔に比べてとっても成長したと思うよ。
    パートナーに巡り合ったことも大きいと思うけど。

    それに比べ、わたしったらね。何してるんだか。
    彼女を見習って、ほんの少しでも成長したいところです。
    2009年01月19日 22:48

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